1:2016/03/19(土) 16:20:44.84 ID:
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2016年の世界の造船発注量は、昨年から半減するとみられている。未曽有の海運不況を前に、日韓の造船大手による受注獲得競争が熾烈さを増している。造船大国の威信を懸けた最終決戦が始まった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文) 
 
 昨年12月中旬、三井造船の幹部らが寒風吹きすさぶドイツのボンを訪れていた。221億円で買収したガス関連のエンジニアリング会社、独TGEマリンと話し合うためだ。
 
 TGEマリン幹部らと香り高い地ビール「ケルシュ」のグラスを傾けながら、三井造船幹部は「(買収から2カ月弱かけて)ようやく落ち着いて今後のことを具体的に話し合えるようになった」と安堵の表情を浮かべた。
 
 TGEマリンは、LNG(液化天然ガス)などを運ぶ中小型ガス運搬船の世界シェア5割を占める。ビジネスモデルは、他社の造船所に技術者を送り込み、自社が作成した設計図通りに建造させるというものだ。当然のことながら、社風は技術者魂に溢れ、技術者のプライドは高い。
 
 三井造船はTGEマリンの技術者が他社に流出することがないよう、同社の独立性を極力維持するなど心を砕いてきた。そこまで慎重になるのは、TGEマリンが韓国の造船大手との戦いに勝つための最大の武器になると考えているからだ。同社の買収の成否が、造船事業の命運を握っている。

 現在、三井造船を取り巻く環境は芳しくない。田中孝雄・三井造船社長は2月の会見で、「造船マーケットは冷え込んでいて、(獲物を得ようとしても)魚が泳いでいない。今年は12月まで厳しい」との見方を示した。とりわけ、主力のばら積み船(鉄鉱石などを梱包せずに大量輸送する船)の価格は、中国経済の減速を受けた資源の需要減により大暴落している。

 こうした中で、三井造船が生き残り策として選んだのが、需要拡大が見込める中小型のガス運搬船だ。大型船の生産に適した巨大ドックを持つ韓国勢が不得手とするニッチな分野でもある。
 
 供給過剰のばら積み船から、韓国に勝てる船へ。三井造船のように、競争力のある船種へシフトできるかどうかが、日本の造船業界の生命線となる。
 
 目下のところ、世界の造船市場は三つどもえとなっており、中国が首位に立ち、2位韓国、3位日本と続く(下図参照)。

 ところが「近年、一部の中国企業が建造した船にカタログ燃費と実燃費に差異が出るなど、性能が疑われた」(造船業界関係者)ため、中国は評判を落としている。実際に、中古船価格を見ると、「韓国製が日本製の平均1割安なのに比べ、中国製は2~3割安い」(同)。
 
 中国製の発注者は安さを重視した特定層に限られ、日本・韓国勢の発注者とはすみ分けが図られつつある。つまり、日本の造船業界にとって、最大のライバルは中国ではなく、韓国だ。

● 経営難の韓国勢は なりふり構わぬ 手負いの獣
 
 日韓の造船業界にとって、2016年は企業の生き残りを懸けた最終決戦の年になる。大まかには、二つの理由がある。
 
 第一に受注量が激減している。双日マリンアンドエンジニアリングの松下悟執行役員は、「16年の世界の発注量は前年の半分以下になる」とみるなど、未曽有の海運不況が到来している。
 
 その主因は、駆け込み需要の反動減だ。今年1月以降に起工する船を対象にNOx(窒素酸化物)の排出規制が強化された。NOx削減装置を搭載するなど規制対応により建造コストが高くなる。そのため、船のオーナーは昨年のうちに船を買い付け、今年は買い控えている。
 
 第二に、日本の造船大手が、主力のばら積み船から韓国が得意とする船へシフトすることで、受注競争が激化する。日本勢が注力するのは、石油タンカー、コンテナ船、LNG船の3分野である。