1:2016/03/29(火) 22:45:21.02 ID:
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 かつて米国特派員だった頃、米国政府関係者に取材した際「ミスター○○」と呼んだところ「私の父を呼んでいるように聞こえるので、名前だけを呼んでほしい」と言われたことがある。米国では通常、初対面のあいさつを交わした後は、互いの名前(個人名)を呼び合うのが普通だ。日常的に敬語を使う韓国人にとってはなじみがない習慣だ。ただ名前を呼び合うと、対話の内容や質が変わってくる。「次官、どうお考えですか」と「デビッド、あなたはどう考える?」では完全に次元の違う対話だ。名前で呼び合えば明らかに互いの距離感がなくなり、目線も変わってくるのだ。

 世界銀行のキム・ヨン総裁は韓国系米国人だが、2012年の就任式の際、職員に自らを米国名の「ジム」と呼ぶよう求めた。つまり銀行内では「キム総裁」や「キム博士」ではなく、友人のように名前を呼んでほしいということだ。一見非常にフレンドリーだが、韓国企画財政部(省に相当)の朴宰完(パク・チェワン)長官に初めて会った時、キム総裁は韓国語で「先輩、今後よろしくお願いします」とあいさつした。また国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長と二人で話をするときも「先輩」と呼んでいる。相手と親しげに、なおかつ格のない対話をするには、その文化によって相手に対する呼称に大きな違いがあることかが分かる。

 大手企業グループのCJは2000年から社員同士で互いを呼ぶ際、「部長」「課長」のように肩書ではなく、名前とその後に「ニム(様、さん)」を付けて呼ぶことにした。もちろん最初は非常にやりにくかったようだ。ある役員は「娘のような年齢の秘書が突然私の名前を呼んできた。非常にとまどった」とこの制度が導入された当時を振り返る。ただ若い社員の間では意外と評判がよかった。呼び方が変わっただけだが、それでも自分が非常に尊重されているように感じたという。また同じく大手企業グループのSKでは課長や次長、部長ではなく、名前の後に「マネージャー」や「PL(プロジェクトリーダー)」などの言葉を付けて呼ぶことにした。第一企画は一般社員から社長に至るまで、全員の名前の後に「プロ」を付けて呼んでおり、カカオでは社員が自分の英語名を決めてそれを呼び合っている。キムさんは「ダニエル」、パクさんは「ニコル」といった具合だ。

 サムスン電子も近く「ニム」や「プロ」といった呼び方に変更する予定だという。上司や役員の機嫌を伺うような文化では、世界一流の地位を維持できないと判断したからだ。また「社員」「代理」「課長」「次長」「部長」といった5段階の職位も減らし、意志決定までの段階を簡素化するという。米国のシリコンバレーで活躍する企業のように、クリエーティブなIT(情報技術)企業へと生まれ変わるためには、組織の文化から見直す必要があると考えたようだ。

 2002年のサッカー韓日ワールドカップの際、韓国代表のヒディンク監督(当時)が成功した秘訣(ひけつ)の一つも、普段から選手たちが年齢や先輩後輩といった立場に関係なく、互いに名前で呼ばせたことにあった。とりわけ試合中の緊迫した状況で、互いを簡単に名前だけで呼ぶのは非常に効果的だった。もちろん呼び方を変えるだけで韓国の縦の文化がすぐ横の文化に変わるわけではない。シリコンバレーの企業はどこも最高経営者が一般社員と何の気兼ねもなく顔を合わせ、その時々の懸案や成果について共有し、時には若いインターンもこれに加わるケースがある。ただこのような「呼称破壊」を単なる実験で終わらせないためには、それに伴って一層円滑なコミュニケーションが必要になってくるだろう。

姜仁仙(カン・インソン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2016/03/28 09:59
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