1:2016/05/01(日) 10:13:00.79 ID:
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 ミャンマー北部カチン州のイラワジ源流部のミッソン。ダムが完成すれば、この一帯全域が水没する

 ミャンマーで新政権を主導するアウンサンスーチー国家顧問(70)に中国が猛烈にアプローチをかけている。それは昨年11月の総選挙でスーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」が圧勝する以前からの、事実上の「スーチー政権」誕生を念頭に置いた動きだった。

 スーチー氏は軍政期、民主化運動で計15年に及ぶ自宅軟禁など厳しい弾圧を受けた。その軍政を全面的に支えたのが中国である。

 だが、スーチー氏は昨年6月、初めて中国に招かれ、習近平・国家主席と会談した。スーチー氏は会談内容を一切口外していないが、舞台裏で興味深い「接触」が目撃された。

 外交筋によると、スーチー氏の北京での滞在先に、ある国営企業の幹部が姿を見せた。中国電力投資集団公司。ミャンマー北部カチン州で「中断」している水力発電用の大規模ダム開発「ミッソン計画」の主体企業だ。
 
 幹部は「ぜひ説明を聞いてほしい」と面談を求めたのだった。外交筋は「ミッソン計画再開に向けた反転攻勢だ」と解説する。

 ミッソン計画は、中国の国家エネルギー戦略の一環である。両国が蜜月関係にあったミャンマー軍政期に調印された。総発電量の9割が中国向けで、中国南部の経済成長の原動力にする狙いだった。だが、テインセイン前政権は民政移管半年後の2011年9月、「民意に従う」として「任期中の一時停止」を突然発表する。世論の反中国感情に配慮した「民主化」改革への「英断」だと、国内外で称賛された。造成工事は1割ほどで停止する。

 そして今、スーチー氏が「ミッソン」と向き合うことになった。再開か、中止か。

 そんな中、スーチー氏は新政権発足1週間後の4月5日、中国の王毅外相を最初の外国閣僚としてミャンマーに招き外交を始動させた。テインセイン政権下でぎくしゃくした中国との関係正常化に向けた判断のようだ。

 スーチー氏は王氏との会談後の共同記者会見で、ミッソン計画について「まだ(計画)合意書をよく読んでいない」と述べ、明言を避けた。総選挙キャンペーン中からこのスタンスは変わらない。

 ただ、新華社通信の先の取材に、ミッソン計画に連動する中国の経済圏「一帯一路」構想への支持を表明。中国の国益を意識し「双方の利益を望む」と語っている。

 スーチー氏は13年、中国企業が手がけるミャンマー中部の銅山開発を巡る住民の反対運動で「開発中止は外国投資を冷え込ませる」と、事業継続の必要性を示した経緯もある。

 「国民和解」を最優先課題に掲げるスーチー氏だ。独立(1948年)以降続く内戦を終結させるには、一部の少数民族武装組織に大きな影響力を持つ中国の支持が欠かせない。内戦終結の先にしか、彼女が「民主化の核心」と強調する憲法改正も現実味を帯びないという実情がある。

 ミャンマーにとって中国は、中国依存から全方位外交にかじを切った今も最大の貿易相手国だ。計画を葬り去れば、中国から何らかの報復を受けるリスクを伴う。一方で再開すれば、「民意」の重要性を主張してきたスーチー氏は世論の失望と反発に直面する。「民主化の逆行」とのそしりを受けかねないのだ。

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 ミッソン計画を巡り深刻なジレンマを抱えるスーチー氏。その決断は、船出を始めた「スーチー政権」の針路を大きく左右する試金石ともなる。

2016/05/01
http://mainichi.jp/articles/20160501/ddm/007/030/147000c