中国 
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:2016/05/16(月) 22:20:13.95 ID:
 人民解放軍は中国共産党の力の源泉であり、13億人を治める巨大権力の象徴である。長年、政治闘争の舞台となり、汚職など腐敗の温床ともなった。その伏魔殿を、習近平・中国国家主席は「反腐敗闘争」で発揮してきたリーダーシップで大きく変革しようとしている。

 そこに死角はないのか。防衛省防衛研究所主任研究官の増田雅之氏がレポートする。

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 中国人民解放軍内部からの強い反発が予想されたにもかかわらず、習近平はいかにして軍改革を進めることができたのか。結論を言えば、政権発足以来の「反腐敗闘争」で敷いたレールの上だからこそ、可能だった。

 特に、軍制服組のトップ徐才厚の摘発は、習近平の軍改革に関する「不退転の決意」を内外に示した前哨戦に位置付けることができる。習の周到な作戦が奏功し、いまのところ軍上層部から改革への異論は聞かれない。

 一方、未曽有の改革は火種も残している。特に注目すべきは「海」「空」「ロケット軍」と同等の位置づけになり、軍における地位が相対化された陸軍の動向だ。

 今後、四総部に代わる15部門のトップ人事で「脱・陸軍中心主義」が進むことが予想される。現状は、その主要ポストは横滑りで陸軍を配置している。未だ定まらない部門間のパワーバランスや人事の動向一つで、陸軍の不満が高まりかねず、2017年の次期党大会に向けてはますます目が離せない。

 退役軍人の処遇も大きな不安要素だ。習近平は一連の軍改革で兵力30万人の削減計画を明らかにした。当面、地方政府や国有企業が受け皿となり、退役軍人の配置転換や再雇用が進むだろうが、経済が悪化するなか、30万人もの受け皿を本当に用意できるのか。

 それがうまく行かなければ、再就職できない“リストラ軍人”が政権への不満を募らせるのは必至だ。年間10万件以上の集団抗議活動が行われる現在の中国で、膨大な数の退役軍人がデモに加担すれば、地域社会の不安定化は避けられないだろう。

 退役軍人は職務上、地域に跨がるネットワークを持ち、武器や装備にアクセスしやすい立場にある。

 最悪の場合、中国で退役軍人による武装デモが地域を跨いで起こるかもしれない。
成都軍区を掌握し、「2個集団軍が自分の掌中にある」と豪語した末に失脚させられた元重慶市トップ・薄煕来の事件は、そうした危機感が決して杞憂ではないことを、習近平に思い知らせた。

 超大国だった米国の力が相対的に低下する中、「中国の夢」を掲げて大国化をめざし、東シナ海や南シナ海、台湾問題などで米軍と対峙するシナリオを描く習近平は、米国の統合軍や作戦形態をモデルにして軍の再組織化を急いでいるとみられる。

 30万人の人員削減を習近平は「軍縮である」と強調するが、実態は軍の精鋭化に他ならない。

 周辺に「戦い、勝利する軍隊」が登場することは日本にとっても大きなチャレンジとなる。新組織のカウンターパートを確認し、平時から中国と安定した関係を構築する努力が必要だ。

 ●ますだ・まさゆき/1976年広島県生まれ。2003年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。米国防省のシンクタンクであるダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センター客員教授や東西センター客員研究員等を歴任。専門は現代中国の外交・安全保障政策、アジア太平洋の国際関係。

※SAPIO2016年6月号
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160516/frn1605161612012-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160516/frn1605161612012-n2.htm