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中国が軍事基地化した南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島のファイアリークロス(永暑)礁(ロイター)

 オバマ米大統領の外交政策の失敗が、「世界的規模での地殻変動」を招いたことは事実だろう。

 南シナ海は、ほぼ「中国の海」と化した。シリアはロシア主導の武力解決になりそうだ。北欧からバルカン半島にかけての暗雲は、不気味な様相をはらんできた。

 師走に来日するロシアのプーチン大統領は10月初頭、イスタンブールに飛び、トルコとのパイプライン敷設を最終的に決め、しっかり握手した。親EU、親米路線のトルコが窯変(ようへん=予期しない変化)している。ロシアのギリシャやセルビア、スロバニアへの接近も尋常ではない。

 一方で、プーチン氏はフランス訪問をドタキャンし、EU諸国のロシアへのミサイル配備に抗議した。

 ロシアはタジキスタン、セルビアに次いで、キューバに軍事基地の再開を打診している(モスクワタイムズ、10月12日)。キューバからフロリダまで、わずか144キロだ。

 国際秩序の、もう1つの撹乱(かくらん)者・中国はどうか。

 中央アジアへの浸透ぶりは連載第3回でも指摘した。中国は、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を個別撃破し、ベトナムのパラセル(中国名・西沙)諸島へのクレームも、フィリピンのスカボロー礁(同・黄岩島)をめぐる侵略への抗議も、公式会議の議題から外すロビー活動を展開した。

 北京に、ミャンマー政権のトップ、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相を呼びつけ、スリランカへは中断した沖合人工島工事の損害賠償を引き下げる代わりに、プロジェクト再開にこぎ着け、インドを脅かす。

 習近平国家主席はバングラデシュを訪問し、港湾設備工事への再参入をほのめかした。要するに、南アジアにおけるインドの影響力をそごうと、露骨な振る舞いを演じているのだ。

 中東への入り口はすでに、パキスタンのグアイダール港を押さえて潜水艦寄港を可能とした。さらに、アフリカ北東部の角にあるジブチには、中国軍の軍事基地を設営し、近く1万人駐屯体制に入ることでジブチ政府と合意した。

 ようやく全体主義を捨てた旧東欧は、共産主義・中国を嫌うが、西欧諸国、とりわけ、ドイツとフランス、英国は「中国のカネ」を当てにし始めており、米国の「対中孤立化政策」には付き合おうとしない。

 ここまで情勢が変化すると、沖縄県・尖閣諸島でも、米国の油断を突いて何かを仕掛けるだろう。

 容易ならざる時代の扉が開いた。
 
=おわり
 
 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『暴走する中国が世界を終わらせる』(ビジネス社)、『世界大乱で連鎖崩壊する中国 日米に迫る激変』(徳間書店)など多数。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161107/dms1611070830003-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161107/dms1611070830003-n2.htm